「平和」を築くために、必要なこととはー海外で活躍した日本人医師の偉業からー

SDGsを学ぶ
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アフガニスタンに用水路をひき、多くの人々の命を救った日本人医師をご存じでしょうか。

お恥ずかしながら、ちこりぃはこの作品を見るまで知りませんでした。

「荒野に希望の灯をともす」

パキスタンとアフガニスタンで35年にわたり病や貧困に苦しむ人々に寄り添い続けた医師、中村哲(なかむら てつ)さんの活動を映像化したドキュメンタリーです。

静岡市内にある「静岡シネギャラリー」にて上映されていた本作を見て、素人ながらに印象に残ったことをお伝えしたいと思います。上映期間が延長され、2022年12月29日まで見ることができますので、ぜひ多くの方に見ていただき、考えるきっかけとなればうれしいです。

\「荒野に希望の灯をともす」公式サイトはこちら/

映画「荒野に希望の灯をともす」
20年以上に渡り撮影した映像素材から医師 中村哲の生き方をたどるドキュメンタリーの完全版!劇場版『荒野に希望の灯をともす』7月下旬よりポレポレ東中野にてロードショー!他、全国順次公開予定(詳細は近日公開予定)

全体を通して、どんな学びがある作品だったか

中村哲医師はパキスタンやアフガニスタンの「無医地区」と呼ばれる、医者がいない地域で医療活動を行ってきた方です。内戦や9・11の報復など危険な状況にありながらも、難民や飢えに苦しむ人々に寄り添い、住民とコミュニケーションを重ねクリニックを設立するなど、人道支援に尽くしていました。

ただでさえ過酷な環境の中、追い打ちをかけるように現地を襲った問題が大干ばつです。井戸の水は枯れ、作物を育てることができず、村からは人が去っていく・・・逃れた地で仕事が見つからず、食べていけず、貧困に陥ってしまうという悪循環が多くの犠牲者を生み出しました。

患者の多くは伝染病や感染症で、充分な食べ物や清潔な水があれば、大きな改善が見込まれるであろう状況でした。

水を確保するため、中村医師は現地の人々と井戸を掘りましたが、年々水位が下がっていく状況をみて、新たな対策を打ち出します。山から枯れることなく流れる水をひくための用水路の建設です。

医療活動は他メンバーに託し、独学で建設に着手し、試行錯誤を重ね現地の人々とともに水路を完成させます。

数年後、荒れ果てていた大地には緑が戻り、農業が営まれ、人が暮らせる地域へと変わっていきます。

それらは65万人の命を救ったといわれています。

本当に価値のある「貧困への支援活動」

2019年、中村医師を含む数名が銃撃に遭い、亡くなりました。

しかしそのあとも、中村医師とともに用水路建設にかかわった現地民の手により、用水路のさらなる工事や農業振興などの活動が続けられています。

中村医師が残したものは、この地で人々が暮らしていくためのタネだと感じます。

物資を送ることも必要な支援の形ではあると思いますが、それは一時的な支援にしかなりかねません。

どうすればこの地で暮らしていけるのか、自分たちで食料を賄えるのか、「未来を生きていくため支援の形」がこの映画で見えた気がします。

平和とはどうやって築かれるのか

映像の中で印象に残ったシーンがあります。

ある村で診療所ができた後、武装した住民に襲撃に遭い、診療所を守るため武器を構えた現地スタッフに「反撃はするな」と中村医師が言ったという出来事です。

当時、マラリアが大流行し、その特効薬を狙っての襲撃だったとのことです。

本作ではその事件の詳細は語られませんでしたが、この争いの発端は「命の危機」であったと思います。そもそも十分な特効薬が、誰でも入手できるのであれば、こんな事件は起こらなかったのだと思います。貧困が争いをもたらすのであれば、平和を築くためには貧困を解決するすべきなのかもしれません。

「平和には戦争以上の忍耐と努力が必要なんです」、中村医師が残した言葉です。

この言葉以外にも「忍耐」という表現が多かったことが印象に残っています。

武器を配備し防衛力を高める・・・守るためであっても、それは平和をもたらす手段とはなりえないのかもしれません。

日本の募金がちゃんと現地の人のために使われていた

中村医師の活動を支えたのは、所属するペシャワール会に寄せられた募金でした。

募金を募る団体は様々ありますが、こうして目に見えてそれが本当に現地の人たちのためになっているのを見ることができたことは貴重でした。

正直、募金がどう使われているのか、あまり調べることもないのですが、たまに調べて数行の文章や写真だと「本当に?」と疑ってしまいます。何に使われたのかはわかるけど、本当にその人たちの役に立っているのか・ためになっているのかがわからないのです。

一時的な支援ではなく、自立のために使ってほしい・・・与える側の自己満足ではなく、現地で活用し続けることができるものに充ててほしい。そんな思いが、形として残っていることが印象に残りました。

「平和教育」には欠かせないこと-戦争の悲惨さを伝えるだけが平和教育ではない

ちこりぃが過去に公共教育で受けて生きた「平和教育」を振り返ってみると、戦争の悲惨さを伝えることだったように感じます。今回の映画を見て、それだけでは「平和教育」は不十分だったと感じました。

なぜならそこには「平和の築き方」がなかったからです。

「戦争をしないこと」=「平和であること」ではないこと、そんな単純な話ではないことを、この映画を見て感じました。

争いを生み出す火種には、貧困、「自然の恩恵を受けて生きている人間」という認識の欠如、コミュニケーション不足などなど多くあることを実感した映像でした。

どうすれば平和を築くことができるのか・・・この映画が、あらためてそれを考えるきっかけになりました。

映画内でも取り上げられていた、中村医師による書籍

最後に、中村医師の活動とその信念をより深く理解できる書籍をいくつかご紹介します。

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